明日、私は誰かのカノジョ

タイトル:明日、私は誰かのカノジョ
著者:をのひなお
巻数:全17巻 完結
出版社:小学館
掲載誌:サイコミ
発行年:1巻 2019年~17巻 2024年

私は私 もう揺らがない 私の人生は私が主役

明日、私は誰かのカノジョ 8巻

こんにちは。菜葉ねここです。

「明日、私は誰かのカノジョ」(以下「明日カノ」)はサイコミで週刊連載されていた完結済の漫画です。

レンタル彼女や風俗で働く女性、整形やホストにはまる女性、風俗で働き続けたまま四十代になって帰郷した女性、毒親に振り回される女性など、章ごとに異なる女性に焦点を当て、それぞれの悩みや人生を描いていくオムニバス形式の漫画です。

非常にリアルな心理描写、説得力のある状況説明があり、フィクション作品ですが、ドキュメンタリーのような漫画です。

あらすじ・章の構成

明日カノはメインキャラクターの雪を取り巻く物語ですが、エピソードごとにメイン主人公が異なります。

Episode,01 Killing me softly 1巻
レンタル彼女で働くと、その客・壮太の物語。
幼いころに母親に捨てられた雪と、家族仲が良く育ちが良い壮太は、分かり合うことができるのか…

Episode,02 致死量の自由 1~3巻
雪の友人・リナは、飯田という男とパパ活をしている。一方、ナンパで知り合った雄大と、普通の大学生のようなデートをしてみる。
リナの心の隙間はどうしたら埋められるのか…

Episode,03 1mm 3~5巻
雪の同僚・(あやな)は、美に固執し、整形を繰り返す。
彼氏に対しても仕事や年齢を偽り、客からは金をだまし取るとんでもない女。
けれど、彩の無礼ともいえる本音は、誰かの救いになったりもする。

Episode,04 Knockin’ on Heavens Door 5~8巻
キラキラ系女子から一線を引いている冴えない女子大学生・
ひょんなことからホストの楓と知り合い、惹かれてしまう。楓のために風俗で働くことになるが…

番外編 Stairway to Heaven 8~9巻
Episode,04で活躍した、明日カノの人気キャラクター!ホス狂の地雷系女子・優愛(ゆあてゃ)が、田舎から上京するまでの物語!

Episode,05 洗脳 9~11巻
風俗で働く大学生の留奈(伊織)は、人気歌い手の隼斗(バシモト)と出会う。バシモト視聴者キッズの心音(ぽぽろ)は、インターネットで大暴れ!

Episode,06 What a Wonderful World 11~13巻
父の死をきっかけに風俗をやめ地元に戻った四十代の江美(菜々美)。
発達障害のような描写がありますが、明言はされません。その浅慮さから搾取され続ける人生だったが…

Last Episode No Woman No Cry 13~17巻
母親に捨てられた雪と、過干渉毒親を持つ太陽は、お互いに共感し慰めあうようになる。
捨てたくせに男と別れたときだけ連絡をしてくる母親。それでも母の愛を求めたい雪。
雪と母親の関係がついに決着する。

人生にハッピーエンドなんてない

私たちが生きうる限りそうであるように、この漫画にも明確なハッピーエンドはありません。

ほとんどの人間は、望むものをすべて手に入れることはできません。諦めたり、折り合いをつけながら、生きていくしかありません。

この漫画は、そういった人生の一部分を切り取って描いています。

一見状況は変わっていなくても、これといった解決はしていなくても、その人生を生きる本人、つまり主人公達が、問題に折り合いをつけるための選択をするターニングポイントがあり、それによって、主人公の歩む道のりも変わっていくことが読み取れます。

すっきりとしたエンディングはありませんが、彼女たちの選択や、ふとした言葉や心理描写が、私たち読者の人生の1ページに刺さったり刺さらなかったりする、そんな作品となっています。


この先のレビューはネタバレを含みます。

自分の意志で諦める選択

私が「明日カノ」で好きなシーンは、欲しかったものを諦めて、捨てる選択をするところです。

特に、5~8巻で描かれた、Episode,04 Knockin’ on Heavens Door 萌のお話がよかったです。

他の主人公たちとは異なり、萌は「ごく普通の女の子」として描かれます。

他の主人公たちは容姿がすごく優れているので、感情移入ができない部分も多かったのですが、萌は、そんな主人公たちに劣等感を持ちながらも、一線を引いて、自分に似合う服や、自分にふさわしい居場所を持っている、ごく普通の女子大生でした。

「自分を持っている」はずだった萌ですが、ひょんなことから、ホストの楓と出会います。

一般的にイメージされるホストとは違い、誠実で優しい楓を好きになってしまった萌は、イメチェンをして、自分には似合わないと避けていたキラキラ系の服装や髪型をするようになり、また、ホストクラブに通うため、風俗で働くようになります。

萌は、楓のバースデーでシャンパンを入れたくて、風俗で働き詰めることになります。

心はすり減っていき、大学も退学することになり、親への申し訳なさから、とうとうお客さんの前で泣いてしまいます。

楓のバースデーの当日、やっとの思いで貯めた130万を握りしめて新宿に向かった萌でしたが、ホストクラブに着く直前に、楓から名前を打ち間違えられたことをきっかけに、「楓はホストである」ということに本当の意味で気がついたのです。

人生で、本当に欲しかったものを諦めた経験はありますか?

萌はそれまで、欲しいものであっても、「自分には無理」「自分には似合わない」と、妥協して生きてきました。

そんな萌が、恋をしたホストのために、妥協から本気に変わっていく姿、そのため様々なものを犠牲にしてしまい、最終的には諦めることができる過程が、とてもリアルです。

私自身が人生で諦めたときのことを思い出し、とても悔しくて切なくなりますが、萌は諦めることで、自分の人生を良い方向に進めることができ、数あるエピソードの中でもすっきりとしたエンディングを迎えます。

ホス狂地雷系女子ゆあてゃに「ぬるい」と評されたとおり、萌は良い意味でごく普通の女の子から逸脱することがありません。

ホストでいう「売掛」をほとんど利用せず、バースデーもきちんとお金を貯めてから行こうとしているし、最終的にはお金を手元に残しているし、本当にどうしようもない状況にはならないように予防線を張っているところが、やっぱり「自分を持っている」と思うし、強くて堅実なので、好きなキャラクターの一人です。

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